3《 アユ毛バリ 》

 

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アユ毛バリ釣りの歴史は古く、100年以上の昔から考案されてきた古典パターンだけでも、数100種存在するといわれています。

ところで、アユが食い付いてくる毛バリとはそもそも、何をモチーフにして創作されてきたのでしょうか。その諸説は数多く、川の中に棲むカゲロウなどの水生昆虫説を筆頭にして、底石から剥がれた珪藻類の石アカ説、仔魚から稚魚まで海や汽水域で食べていた動物性プランクトン説、はたまた光の屈折による反射食い説などなど。毛バリ釣りファンは想像力をかき立てて謎解きを楽しみつつ、釣果につなげてきました。

このようなアユの毛バリ釣りひと筋の情熱は今も昔も変わりなく、近年になっても新時代を象徴するような美しい新作が次々に誕生しています。これら新作の毛バリは熱烈な毛バリ釣りのベテランや地方の釣具店の発想がもとに、毛バリ作り専門の巻き師に注文して繊細な職人技によって完成されています。今や毛バリの種類は天文学的な数字に上っているかと思われます。

しかし、これからアユの毛バリ釣りに入門したいというビギナーファンにとっては、どれを選んでいいものか、どこから手を付けて良いのか見当がつかないでしょう。

そこで手始めの第一歩として、古典毛バリの中から名作と呼ばれる人気毛バリを試してみることを奨めます。ぜひそろえてもらいたいのは、関東を代表する「東京鮎毛バリ釣り研究会」が発表している『推薦毛バリ10種』です。名人名手ぞろいの同研究会会員たちが長年蓄積してきた実釣データを分析し、全国どこのアユ河川でも当たり外れが少ない名作毛バリ10本を厳選しています。

『推薦毛バリ10種』を試して、ビギナーズラックでも釣れた毛バリや気に入ったデザインの毛バリが見つかった時には、八ツ橋荒巻赤底なら八ツ橋五段巻き、青ライオンなら青ライオン立青ラメといったように、原型毛バリと同じ名前を含んだ親戚筋のバリエーション毛バリを買い足してみると、毛バリ釣りの楽しみが広がっていくと思います。

今回は「東京鮎毛バリ釣り研究会」の『推薦毛バリ10種』に、本欄マグエバー毛バリシリーズの中から推薦10種それぞれのバリエーション毛バリを選び、主な特徴と効果的な使い方を添えています。

 

【アユ毛バリの構成と部位名称】

アユ毛バリは兵庫県の播州や石川県の加賀、高知県の土佐など日本各地で作られ、中でも播州毛バリは日本伝統的工芸品として知られています。

アユ毛バリ専用の釣りバリには、ハリの軸が長い独特のフォルムをしたスレバリを用い、ハリス付きの毛バリに仕上げてあります。

アユ毛バリの主だった特徴は、ハリ軸最上段のチモトに丸く小さく漆で固めて金箔を貼り付けた“金玉”が作られ、ハリの腰(曲がり部分)には赤ヅノや黄ヅノ、青ヅノなどと呼ぶ2本のツノが突き出ていることです。

そして、基本的な構成は金玉下にぐるりと“ミノ毛”が巻かれ、その下に続くハリ軸にはいろいろな材料が巻かれます。部位の名称にはミノ毛に添わせる“追い毛”や“元巻き” 、“帯巻き” 、“胴巻き” 、“先巻き”、“先玉”などがあります。とはいっても、毛バリの種類によって使われる部位は異なり、ほかにも専門的な部位がたくさんあります。

毛バリを巻く材料はニワトリを筆頭にキジやカモ、カラスなど多種多彩でカラフルな鳥類の羽根を主軸にして、動物の獣毛も取り入れられています。近年では金や銀、赤、青といった各色のメタリックなラメテープが素材の一つとして多用されていますし、漆を固めた金玉の代わりとして真鍮製の極小ビーズ玉も使われています。

このようにアユ毛バリの構成や部位名称は複雑ですが、難解な点を一つ一つ解き明かすように覚えていくと同時に、夜な夜な天眼鏡で毛バリの細部をのぞき見るインドアフィッシングも、アユ毛バリ釣りを極めていくための醍醐味だと思います。

 


釣り人生が詰まった毛バリケースは宝物。名札ラベルなしで毛バリの種類が判別できるまでには相当な年期がいる


アユがなぜ毛バリに食らいつくのか?永遠の謎解きゲームを楽しむ

 

推薦10種

【推薦その1】

「八ツ橋荒巻赤底(やつはし・あらまき・あかぞこ)」

バリエーション
「八ツ橋五段巻き(やつはし・ごだんまき)」

【主な特徴と効果的な使い方】
八ツ橋は古くからバリエーションが多く、中でも八ツ橋荒巻赤底を基本。大アユによく掛かる毛バリとして知られ、赤底のほか金底、小巻もそろえておくと完璧

 

 

【推薦その2】

「青ライオン(あおらいおん)」

バリエーション
「青ライオン立青ラメ(あおらいおん・たてあおらめ)」

【主な特徴と効果的な使い方】
全国のアユ毛バリ釣り河川のどこでも釣れ、水況や時期などの諸条件を選ばない優良バリ。特に澄み水に効果があり、ラメ入りなど豊富な青ライオンのバリエーションをコレクションしていく手もある

 

 

【推薦その3】

「清水(しみず)」

バリエーション
「清水中金南郷(しみず・ちゅうきん・なんごう)」

【主な特徴と効果的な使い方】
水深がある淵や低水温時の早朝、上流域に効く。ノーマルな清水と清水中金の2本セットを忍ばせておくと万全

 

 

【推薦その4】

「黒髪(くろかみ)」

バリエーション
「令和黒髪(れいわ・くろかみ)」

【主な特徴と効果的な使い方】
黒髪に当たってくるのは香り高い美形アユが多く、日中の時間帯に良型がヒットする確率も高い。赤ヅノとともに黄ヅノも忘れずに

 

 

【推薦その5】

「夕映小巻 (ゆうばえ・こまき)」

バリエーション
「新光夕映(しんこう・ゆうばえ)」

【主な特徴と効果的な使い方】
夕映は小巻を基本とし、その名の通り陽が沈む前の夕釣りに特化している。下バリよりも枝バリに効果的

 

 

【推薦その6】

「エリ黒(えりこく)」

バリエーション
「エリ黒4号先銀(えりこく・よんごう・さきぎん)」

【主な特徴と効果的な使い方】
増水後回復過程のササ濁りから澄み始めまでの水色によく、水況条件がマッチすると爆釣する確率が高いハリ。天然ソ上アユよりも、湖産や人工産の放流アユ河川に向く

 

 

【推薦その7】

「暗ガラス(やみがらす)」

バリエーション
「暗ガラス金ラメ(やみがらす・きんらめ)」

【主な特徴と効果的な使い方】
夏場の日中から夕釣りにかけてよく当たり、どちらかというと大河川向き。また、アユの魚影は確認できるのに活性が低い時にも不思議と当たる1本

 

 

【推薦その8】

「二日月(ふつかづき)」

バリエーション
「三日月(みっかづき)」

【主な特徴と効果的な使い方】
古くから当たりが途切れた日中の時間帯に効果的といわれ、中型アユの数釣りが期待できる。青ライオンや茶熊にスイッチしてもよい

 

 

【推薦その9】

「赤熊(あかぐま)」

バリエーション
「赤熊中金スルスミ(あかぐま・ちゅうきん・するすみ)」

【主な特徴と効果的な使い方】
原型の赤熊とともに中金や中銀のバリエーションも◎。日中の時間帯に深場ねらいで型そろうのも魅力で、野球でいえば3割打者的存在

 

 

【推薦その10】

「岡林 2号(おかばやし・にごう)」

バリエーション
「岡林4号(おかばやし・よんごう)」

【主な特徴と効果的な使い方】
現在、本家岡林バリは入手困難なため、他の巻き師が製作した岡林式パターンが市販されている。太平洋側の河川では特に効果がある優秀バリの1本